国際交流Book Review 第2回
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ここでは、世界の様々なことについて書いてある本を紹介します。第2回目は、「地雷を踏んだらサヨウナラ(一ノ瀬泰造著、講談社文庫 \730)を紹介します。
 前号でTom先生が紹介していた国「カンボジア」は、1970年から1991年まで、泥沼の内戦状態にありました。1993年、国連による統治のもとで全国民による選挙が行われ(その過程で、選挙監視団の日本人に2名の犠牲者も出ました)、ようやく安定を取り戻したのです。「10年前には観光客がいなかった」と僧侶が言っていた、とTom先生は書いていましたが、カンボジアは観光のできる状況からはほど遠かったのです。
 さて、この本は、1972年3月にカンボジアに渡り、1973年11月に消息を絶つまで従軍カメラマンとして戦場を撮り続けた青年「一ノ瀬泰造」の記録です。浅野忠信主演で1999年に映画化もされており、DVDもあるので、本の苦手な人はそちらを見てもよいでしょう(今年4月にも「TAIZO」というドキュメンタリーが公開されます)。
 彼がカンボジアに行ったのは、戦争を撮りたかったからではなく、美しい仏教遺跡「アンコールワット」をカメラに収めたかったからです。アンコールワットは当時戦いの最前線でした。そこで彼はカンボジア人の役人や軍人にコネを作り、政府軍について戦いの最前線に行きます。反政府軍と政府軍がお互いの食事について話をする(どちらも食べるために兵士になったのであって、信念に基づいて戦っていたわけではかった)のを聞いたり、前線近くの村のホテルで知り合ったカンボジア人教師の相談にのったりしながら、現地の人と心の交流を深めていきます。
 この本は、一ノ瀬泰造本人が書こうと思って書いたのではなく、家族や友人に宛てた手紙の内容をまとめたものです。飾らない文章で、特殊な環境ではありますが、現地の人々と深く付き合って、そして現地で亡くなった若者の記録です。世界には当時のカンボジアと似た状況の国がたくさんありますが、私たちはその現実とどう向き合えばよいのかを、この本を通じて考えてもらえれば幸いです。